#マーケティング
ノヤン先生のマーケティング学
2014年 4月24日
庭山 一郎
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Kindle版 ノヤン先生のマーケティング学
満足度:★★★★★
本書は、マーケティングを一生の仕事にしてきた庭山一郎さんが、「世界で唯一、マーケティングで生計を立てるミミズク」ことノヤン先生として語りかける形式で書かれたマーケティング講義本です。理論やフレームワークだけでなく、その背後にある歴史的背景や、現場でのリアルなエピソードがふんだんに盛り込まれていて、読み進めるほどにマーケティングの面白さと奥深さを教えてくれます。
- 第1章 マーケティングを創造した巨匠たち
- 第2章 マーケティングのフレームワークとセオリー
- 第3章 顧客や製品、市場を評価するフレームワーク
- 第4章 マーケティングのチャネルとツール
- 第5章 マーケティングの組織とキャリア
- 第6章 マーケティングの学び方と新しい潮流
最初の講義は、マーケティング界の巨人、セオドア・レビットの紹介から始まります。
今の日本の若いビジネスパーソンにマーケティング学者の
名前を尋ねれば、フィリップ・コトラー、デービッド・アーカー、
ジェフリー・ムーアなどの名前が挙がるじゃろう。
経営者に聞けば、これに経営学の大家ピーター・ドラッカーや
戦略論のマイケル・ポーターが入るかもしれんの。
みなそれぞれに偉大な学者で研究者なのじゃが、ワシは現代の
マーケティングに最も影響を与えた人は誰かと聞かれれば、
最初に挙げるのはセオドア・レビットなんじゃ。
セオドア・レビットは、
「1/4インチのドリルを購入した人が必要としているのは、直径1/4インチの穴である」
「化粧品を買った人々が本当に求めているのは、希望である」
という格言が有名な方ですね。
私も以前『マーケティング論』という、いわゆる鈍器級の分厚い本を購入して読み込んだことがあります。
読むのは大変でしたが、ページをめくるたびにマーカーを引きたくなる箇所ばかりで、大変勉強になる一冊でした。
マーケティング界で最も有名なのはフィリップ・コトラーだと思いますが、ノヤン先生はどうやらレビットの方がお気に入りのようです。そのレビット評が私自身の印象とも近く、自然と本書の世界に引き込まれていきました。正直、ミミズクが語り手という奇抜な設定は途中から意識しなくなるくらいで、気づけば「ノヤン先生の声」としてすっと頭に入ってきます。同時に、マーケティングに関する知識が、肩に力を入れなくても頭の中にスッと染み込んでくる感覚があります。
まずはセグメンテーションで勝てる土俵を見つけ出そう
マーケティングは「売れる仕組みを創ること」じゃ。その売れる仕組みを設計する時に、絶対に手を抜いてはいけないのがこのSTPであり、さらに仕組みを構築した後も常に意識し、チェックし続けなければならないことでもあるんじゃ。マーケターの仕事はSTPにはじまって、STPに終わると言っても過言ではないとワシは考えるおるんじゃよ。
ノヤン先生は、マーケティングを「売れる仕組みを創ること」と定義します。そのうえで、その仕組みを設計するときにも、走り出してから軌道修正するときにも、絶対におろそかにしてはいけないのが STP だと語ります。マーケターの仕事は STP にはじまり STP に終わる、という表現は少し大げさに聞こえるかもしれませんが、現場で長く仕事をしていると、たしかにその通りだと感じる場面が多いものです。
私自身、20年近くマーケティングの世界で仕事をしてきて、いろんな手法を学び、実践してきましたが、この中で個人的にも一番役に立っているのはSTPです。さらに中でも、セグメンテーションが一番「効いた」と感じております。
なぜセグメンテーションがそこまで重要なのか。私の答えはシンプルで、「センスのよいセグメンテーションができると、人の行動レベルが変わるから」です。誰に向かって話しているのかがクリアになった瞬間、企画書に載る言葉が変わり、提案の順番が変わり、営業担当者の一言目が変わります。結果として、打ち手の精度も上がり、現場の温度感も変わるわけです。
つまり、セグメンテーションはきれいなスライドをつくるための区分けではなく、「どの土俵で戦うのか」を決め、その土俵で本当に動いてくれる相手を見極めるための思考装置なのだと思います。
本書の内容紹介には、”マーケティングの初級者には基礎から奥深いところまで隅々まで学べる 「なるほど!」 を、ベテランの方にはノヤン先生のアカデミックな語り口から生まれる 「そう来たか!」 をお届けする” 、と書かれています。
実際に読んでみると、その言葉通りだと感じました。各講義が、私自身の経験や現場でかんじていたことをきれいに言語化してくれ、「ああ、そういうことだったのか」と納得感が積み上がっていきます。同時に、マーケティングの基礎や歴史がわかりやすく整理されていて、理論や手法が生まれた背景、そこにまつわる雑学的なエピソードまで含めて楽しめました。
単なるテクニック集ではなく、「なぜ自分はこの仕事を続けられているのか」をあらためて考えさせてくれる一冊だと思います。
